愛華ちゃんは私と響の“恋人契約”のことを知ってるし、響が女子たちに囲まれなくなったことを物凄く喜んでくれている。


普通なら偽りでも他人が好きな人の“恋人”になるのは嫌だろうけど、愛華ちゃんは私が誉くんのことを好きなことを知ってるし、男子に告白されてうんざりしていることも知っている。


だから“恋人契約”をしても何ら問題はない。


それに、私と響は家が隣同士で生まれたときからずっと一緒なのも知っているしね。

今更離れるなんて無理な話だ。



「で、いつ言う訳?」

「……うーん。最後って言ってもちゃんと授業があるから授業が終わってからかなぁ」

「まぁそうなるわな。終わったら結果聞きに行ってやるよ」

「えー」

「フラれたら慰めてやる」

「ちょっと!縁起悪いこと言うのやめてよねっ!!」



これから告白しようって時にそんな事普通言う!?最低だ、コイツッ!



「頑張れぐらい言えないの!?アンタはっ!」

「いてっ!殴んなよ暴力女!」

「うっさい!もう解除してやるっ!」

「ちょ、それは勘弁ってさっき言っただろ!?」

「知らないっ!」



道のど真ん中で、小学生みたいに殴り合っている私たち。


日常茶飯事とも言える喧嘩はもはや私たちのコミュニケーションの一つになっていたりする。


けど。


「華恋ちゃん、響くん。そんなとこで喧嘩してたら危ないよ?」

「……っ、誉く──」


好きな人の前では──誉くんの前では極力喧嘩しないようにしていたのに。