「……なに?」

「ごめんなさい……」


 それは――何に対する謝罪なのだろう?

 偽善者ぶってごめんなさい?こういうイジメっ子たちがいない時は声をかけられる勇気があるのに、イジメっ子たちがいない時は声をかける勇気がなくてごめんなさい?イジメそのものから助けられなくてごめんなさい?

 ははっ!まあ、なんにせよ……日陰乃さん、キミがクソそのものだっていうことに変わりはないよね!

 自分の都合が悪ければ、何も出来やしないんだから……。キミも、クラスメートのみんなも、先生も。みんな、みんな。クソそのものに変わりはないのだ。

 僕は何も言わず、未だ握りしめられたままの日陰乃さんの手をはらって、教室へと歩きだす。

 その際、左手首の切った傷口から鮮血が飛び散ったのだが、日陰乃さんはそれを不愉快そうに顔を歪ませながら、身を引いたのを見逃さなかった。


 ――あははっ!所詮、人間なんて……。


 教室にはいると、さっきまで騒がしかった教室はシンと静まり返った。

 僕をガン見している。先に学校に来ていたイジメっ子の3人である佐藤と鈴木と田中も、僕のことをガン見している。

 あれー?いつもは無視を決め込んでいるのに、“今回の今日”はガン見をしてくるんだね?いつもと違う行動を起こしたから、みんなの行動も違うのかな?