「そうならないように、手当てはちゃんとした方が…」

「うるさいなぁ!僕の左手首が化膿して切断してなくなろうが、君には関係のないことだろう?!」


 今の今までの66回……いや、それ以降も含めて、僕がイジメを受けていた時はクラスそろって見て見ぬふりをしていたというのに、こういう時にだけ偽善者ぶるの……やめてくれないかなぁ?

 すっごく迷惑で、すっごく虫ずが走って、すっごく腹立たしいんだよね。あー、もう、イライラする。


「でっ、でも……目の前で怪我をしている人を見たら放ってなんておけないよ……」

「……くくっ」


 思わず笑ってしまった。日陰乃さんはそんな僕を見て、なんとも不思議そうな表情を浮かべている。


「『目の前で怪我をしている人を見たら放ってなんておけない』……か。それ、クラスメートのみんなの前でも言える?」

「! ……っ」


 日陰乃さんはバツの悪そうな表情を浮かべ、俯く。そして唇を噛み締めた。

 ほらね。結局は偽善者なんじゃないか。“そんなことを言ったら、今度は私がイジメられるかもしれない”……そう思うと怖いんでしょ?分かっているよ。

 だからこそ、生半可な言葉を投げ掛けてこないんでほしいんだよね。ほんっと、耳障りにしかならない。


「じゃっ、僕は教室に行くから」

「ひっ、春夏秋冬くん……!」


 まだ何かあるの?