何も考えず、ぼんやりと時計を見ていると、時間はどんどんと過ぎ去っていき……やがて、時計の長針は7時13分を指した。

 さて、そろそろお母さんが声をかけてくる。


「……」


 ……ほら、もうそろそろお母さんが。


「……」


 お母さん、が……。


「……え?」


 思わず声が出ていた。

 時計の長針は13分を過ぎ、14分……15分と指していく。

 ……どういうこと?

 いつもならお母さんが声をかけてくるのに、どうして今回は何も言ってこないの?今回に限って、何も言ってこないの?どうして?どうして?

 胸の辺りがザワザワとうごめいていって、言いようのない不安感が覆いつくしていく。


 ――怖い。


 嫌になるほどの“当たり前”が起こらないと、こんなにも怖いと感じるものだなんて。

 お母さんが話し掛けてくる7時19分、7時31分になっても、1階からは何も聴こえてこない。

 ゲームのリセットボタンを押すかのような軽い考えで、このまま死んでしまおうかと考えたけれど、それはさすがにとどまった。

 ……1階におりてお母さんが何をしているのかを確認するまでは、怖くて、死ねない。