ムッとしたけど、すぐに気を持ち直して、僕は市場へとやって来た。

 囲まれて取り押さえられると厄介だから、ナイフはちゃんとカバンの中に隠したよ。えらいでしょ。

 ……以前の今日にも市場には来たことがあるから、どんな品物があるのかとか、どんな人が来ているのかとかは、だいたい把握済み。

 何度、足を運んだって、置いてある品物は変わらないっていうのにね。

 思わずあくびを漏らす。


「ふわぁ~あ……」


 ――っ!


 ……え?

 今、見覚えのない子が横を過ぎていったような……気がしたんだけど、気のせいかなぁ……?

 慌てて振り返るも、それらしい子はいない。

 やっぱり、気のせいかな?

 その子は長い、さらさらとした真っ白い髪をしていたような……。

 ああ、でも、実際に振り返ってみてもそれらしい子はいないんだから、やっぱり気のせいかな!

 あはは。こんなことになってしまって、本格的におかしくなっちゃっているなぁ、僕。あはは。