「お母さん」


 それなら、お母さんを刺したのは誰でもない僕だって分からせてあげるために、言ってあげるよ。


「それ、」


 声が出せなくなっても、ちゃんと耳は聴こえているでしょう?


「僕がやったんだよ」


 バッと振り返ったお母さんの瞳は見開かれていて、口をぱくぱくと動かしていたけど、やっぱり何を言っているのかまでは分からない。

 うーん、首元を刺したのは間違いだったかな?違うところを刺して、お母さんの反応を見ればよかったかなぁ。

 内心、がっかりとしていると、お母さんは僕に手を伸ばし、ふらふらとしながら近寄ってきために――避けた。

 だって、自分の身に他の人の血が降り懸かるのは嫌だからね。

 思った通り、お母さんはそのまま前のめりになり、床に倒れてた。


「っ……っ、っ……!」

「……何を言っているのか、さっぱり分からないよ。お母さん」


 どうしてこんなことを……とか、よくもこんなことを!恨んでやる……とか言っているのかな。

 床をはいずるようにもがき苦しむお母さんは、ビクンビクンと痙攣したのち、やがて動かなくなった。

 ……死んだ、んだ。