空の誓い、海との約束



 満月の夜、決まってリフは居間のソファで夜を過ごしている様だった。月が綺麗で眠れなかったというあの日から、ずっと。

 別れの数日前も満月だった。あと数日で本国に戻り、戴冠する。押し寄せる不安と緊張で眠れず、私は階下に降りた。

 予想に違わず、リフは居た。ラジオから小さな音で音楽が流れていた。ぼんやりと空を見つめている彼の横顔には表情が無かった。

「リフ」

 声を掛けると、リフはこちらを振り向いた。初めて会った時の彼を彷彿とさせる、冬の海に浮かぶ海氷に似た眼をしていた。

「眠れないのですか」

「ええ」

 私は頷き、リフの隣に腰掛けた。二人とも、しばらく黙っていた。

『何度説得しても駄目でした。リフは島に残るそうです』

 ダグラスが溜息をついてそう言っていた。信頼する一臣下として本国へ連れて帰りたかったのに、と。

『やっとお父様に託された任務から解かれて自由になれるんですもの、リフの好きにしたらいいと思うわ』

 本当はずっと側に居て欲しいけれど、自分の我侭で彼の人生を縛りたくは無い。

 でも――

「……大丈夫でしょうか」

 不安が言葉になって零れた。彼が居なくても、私はしっかり立っていけるのだろうか。