空の誓い、海との約束

「きっと、本当の理由を言いたくないのでしょうね」

「ほんとうの、理由?」

 私はマリーの言いたい事がよく分からなかった。単に綺麗な月を眺めていて眠れなかったのだろうと思ったから。

 翠の瞳を細め、マリーは寂しそうに微笑んだ。

「リフは今まで辛い思いをし過ぎたのでしょう」

 それを聞いて私は思い出した。

 笑わない無表情のリフ。ぼろぼろになるまで踏み付けられた姿。

 人殺しと言われていた事、マリーの優しい手から逃げた彼の手、私に知ってほしいという薄暗い日陰。

 思えば彼の背後には暗い何かが見え隠れしている。知りたいけれど知るのが怖い、そんな何かが。

 私はマリーに囁いた。

「リフの事起こさないから、そばにいても良い?」

「そうしてあげてください」

 足音をさせないようにそばに寄った。ぐっすり眠っているらしく、傍らにしゃがみこんでもリフは起きなかった。

 ふと、彼は身動きした。起こしてしまったかとどきどきしながら見ていると、リフはさらに身を縮めて毛布の中に潜ってしまった。