空の誓い、海との約束

 たかが台詞かもしれない。ここは公式の場で、型通り行えばいいのかもしれない。

 でも僕は、彼以上にエミリア様を愛していると豪語する事は出来なかった。

 エミリア様に嘘をつきたくない。何より、身分ゆえに伝える事の叶わなかった彼の想いを闇に葬りたくない。

 僕は心を決めた。陛下に恥をかかせず、かつ正直な気持ちを伝える為の言葉を探して口を開く。

「……私は、海になる事は出来ません」

 広間の空気がざわついた。何を言うつもりだ、と言いたげにダグラスが僕を睨んだ。エミリア様は驚いて僕を見つめている。

「シエル……?」

 大臣達が囁きあっているのが目の端に見えたけれど、今更引く気はない。僕は慎重に言葉を選びつつ、続ける。

「私は、出来得る事なら海になりたく存じました。この国を護り、静かに寄り添い見守っている――陛下を愛した海に」

 はっとしたようにエミリア様は目を見開いた。まさか、と唇が動いた。僕は小さく頷く。