空の誓い、海との約束

 ここは言葉を交わさない所。僕は手を差し伸べ、陛下が僕に寄り添う。

 それが合図。曲が流れ出す。

 踊りながら、エミリア様は幸せそうに微笑んで僕の瞳を見つめていた。

 その目は僕を見ていない。遠い眼をして、僕の瞳に僕では無い男性(ひと)の姿を重ねている。

『なりたかったな……リフのお嫁さんに』

『私のような賤しい者には勿体無い御言葉です』

 身分ゆえに許されない恋だった。それでも彼は命を懸けて陛下を愛した。

 誰かを想う気持ちの貴さに貴賤は無いはずだ。なのに、彼の想いはこのまま陛下に伝わること無く泡沫と消えてしまうのか。

 曲が終わりに差し掛かる。僕の脳裏に、完全暗記したプロポーズの言葉が流れていく。

『女王陛下、私は誰よりも貴女を愛しております』

 僕は本当に『誰よりも』陛下を愛しているのか?

 エミリア様を“彼よりも”愛していると、自信を持って言えるのか?

 答えが弾き出された瞬間、曲が終わった。一礼した後、僕は手順通り陛下の前に跪く。