その人間に殺人を教唆した衛藤も恐ろしい野郎だ。


 俺も感じていた。


 とにかく、川倉たちには頑張ってもらうしかない。


 悲壮な覚悟を持って、である。


 こうやっている間でも、事件は動く。


 あの事件は、今から十年前の二〇〇四年に起こったもので、当時から警察は警戒していた。


 樋井が、二〇〇八年の新宿ビル不法占拠事件で、犯人である中居善司を撃ち損ね、人質の安東孝志を誤射してしまったことは記憶に新しい。


 中居はSATの隊員により、身柄を確保されたが、事件は風化してなかった。


 俺も思う。


 樋井も苦痛だろうなと。


 所轄の刑事課長として、在籍していて、これから先の地位上昇はないかもしれない。


 いくらキャリアや準キャリアでも、一つの捜査ミスが命取りになる。