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 三月の第一週の金曜に、元警視庁の監察官で逮捕・起訴されていた尾花の第一審の判決が出た。


 東京地裁で、裁判官三人と裁判員六人の合議の元、判決が下される。


 午前十時過ぎ、主任裁判官が判決文を朗読し始めた。


「主文。被告人に懲役二年の実刑判決を言い渡す。……」
 

 やはり、司法の場も甘くはないようだ。


 実刑が下った。


 何せ現役の監察官でありながら、殺人犯を逃亡幇助するなど、言語道断だからである。


 刑事課内のテレビで中継を見ながら、そう感じていた。


 この裁判は日本中が注目している。


 まあ、確かにそうだろう。


 思っていたように、尾花は獄に繋がれるのである。


 これから二年間。