街を歩きながら、島田が言った。


「トノさん、缶コーヒーあるよ。飲む?」


「ああ、済まないね。もらうよ」


 そう言うと、島田が熱々の缶を差し出す。


 さっき、署出入り口の自販機で買ったのだろう。 


 まだ熱が残っていた。


 しばらく手を温める。


 缶の熱で。


 その日、特に街に不穏な動きはなかった。


 俺たちもそのまま署へ戻る。


 確かに手足がだいぶ冷えたのだが……。


 多分、課内は暖房が利いているだろう。


 そう思い、直帰した。