樋井は常にじれったさを感じていて、所轄の刑事課長職を続ける気はないようだった。


 実際、上の方に行きたいのは分かっている。


 だが、上手く行かないのだ。


 考えている以上に。


 それにいろんなしがらみがあった。


 官界独特の。


 公務員という職業は安定している分、重責だ。


 まあ、慣れてしまえばそうでもないのだが……。


 それに夜間の事件などで、急に呼ばれることがあっても、慌てずに現場へと向かう。


 思っていた。


 所轄のデカでも大いに責任があると。


 一員として、そう思っていた。


 まあ、もちろん、警視庁本体が扱う事件はほとんど関係なかったのだが……。