樋井は今現在、三十代後半なのだし、キャリア組として、警察の中にいた。


 だが、所轄の一つの課の課長職に留められているのは、あの事件で人質である安東を撃ってしまったことが遠因としてある。


 俺も思うのだ。


 キャリア組なら、警視総監の椅子を狙うまで、激しい出世競争が続くと。


 そこに辿り着くまでに、多数の人間たちが篩に掛けられ、落とされていくのである。


 熾烈だった。


 何せ、キャリアというのは警察社会では、よほどのことがない限り、職を解かれたりすることはない。


 それに規定のレースにおいて、血眼になる人間たちばかりだ。


 いいか悪いかは分からない。


 そういった秩序の弊害が指摘されている時代である。


 樋井はじれったいと思っているようだ。


 きっと早く、所轄を出たいのだろう。