俺も元々、神名川が警視正という階級で、ずっとこの署の陣頭指揮を執り続けているのは知っていた。


 キャリア組の樋井に刑事課長を任せて、だ。


 警視庁に行けば、向こうの事情に呑み込まれる。


 一方で警視庁捜査一課が警視庁広域指定七×二事件で殺人罪に問われた羽野和夫と、殺人教唆罪の衛藤稀人を追っているのは分かっていた。


 川倉や幸島は一課の捜査員として休む間がないのだろう。


 それが警視庁の現役捜査員の実情だった。


 あの二人を逮捕しないと、事件は解決しない。


 そう感じていた。


 それにいずれ俺だけでなく、島田も警視庁に異動になると。


 昔の大名の国替えと同じである。


 殿様も領民に慣れるまでがきつい。


 まあ、俺の方は二課にいた時代もあったので、警視庁の実情は知っていたのだが……。