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 ちょうど七月も上旬が過ぎる頃、都内は蒸し暑かった。


 夏服で署へ向かう。


 胃痛はだいぶ治まった。


 一時的なものだったのである。


 俺も思っていた。


 ずっと連日、署刑事課のフロア内でキーを叩きながらも、いろいろあるなと。
 

 確かにこの季節、体調が変動しやすいのだし、街も物騒になる。


 夏だと一定の陽気があるので、犯罪者たちが活動期で跳梁跋扈するのだ。


 俺も感じていた。


 未解決事件に火が点かなければいいがと。


 実際、お宮という言葉通り、事実上迷宮入りする事件もあるのだ。


 刑事も必死なのだった。