そして、


「ご用件は何でしょう?」


 と尋ねると、


「六年前の新宿ビル不法占拠事件のことは俺も気に掛けてる。立てこもり犯の中居善司を撃てなくて、人質の安東孝志に弾丸が当たったからな。安東は即死だったし」


 と言い、軽く息をつく。


「課長、あのことはもう蒸し返さない方がいいんじゃないですか?」


「ああ。俺の誤射の後に中居が逮捕されたのはよかったけど、さすがにトラウマになっててね」


「課長。ですから、思い出さない方が」


「うん。だけどね、未だに安東の遺族から恨まれてるよ。尋常じゃないぐらい」


「まあ、そうですが、過去の失点など取り返せるわけがないでしょう?」


「ああ。……トノさんも本庁二課時代にミスしてから、この所轄に飛ばされたんだろ?」


「ええ。思い出したくもありません。あの失点さえなかったら、今は本庁でも上の方に行