樋井も思っているらしい。


 所轄の刑事課長職を長く味わわずに、早く警視庁に戻りたいと。


 それが見て取れる。


「課長、関東六王会のことに関しては、やはり組対に任せるべきです。我々所轄の警官が手出しすることじゃありません。あっちは組織がデカいわけですから」


「まあ、トノさんも健全な意見の持ち主だな。コンビ組んでるシマさんと似てるね」


「ええ。私も長年刑事をやっておりますので、勘所は押さえてあります」


「そうか。……じゃあ、俺の焦り過ぎってことだね?」


「はい。課長は先走り過ぎておられます。関東六王会は確かにここ新宿区を拠点とする暴力団ですが、摘発には幾分時間が掛かりますね」
 

「まあ、警察畑が長いトノさんの言うことだから、あえて受け止めよう」


 樋井がそう言って、俺にデスクに戻るよう促す。


 その日も島田が来ていて、


「トノさん、何で課長に呼ばれたの?」