頷き、席を立って、課長席へ向かう。


「何でしょう?」


「関東六王会摘発をトノさんは本気で考えたことがあるかい?」


「いえ。私は先に組対が動くべきだと思います」


「まあ、そうだろうな。順を追って言えばそうだ。……でも、アイツらが動き出すと思うと、怖くてしょうがないんだよ。何せ、ヤクザは始末が悪いからな。手に負えないと思うことがあるし」


「課長もあまり焦らない方がいいんじゃないですか?組対が動くのを様子見するのも手ですし」


「そう思ってるんだけど、なかなかその通りには行かないんだよね」


 目の前にいる課長はまだ若い。


 確か三十代後半で、キャリア組として、警察社会にいる。


 あまり苦労を味わわずに幹部候補になっているから、詳しいことは知らない。


 警察の掟などに関して、あまり知識はないだろう。