「ちょっと来て」


制服のボタンをまともに止めないまま、あたしは久佐野を後ろに着かせた。


もちろんもう手は離してある。 



あたしはいつか久佐野と来たことのある公園に着いた。



高い所に登って、話をすることにしたのだ。



「ごめん。

俺のせいで怒られて」


「べつに」


久佐野が謝ってくるとは思ってなかった。



「あの傷は...
  聞いてもいいのか」



『何でおまえ、人が助けを求めてるのにそんな冷めてるわけ?』


『今藤だから言ってるんじゃねぇ。


ドールだから言ってんだ。


孤児院にいる子達は必死に守るくせに、クラスのヤツは知らんぷり。



理不尽だと思わねぇか?


だから言ってるんだよ』



『なんか普通のトーンでドールから名前呼ばれるのって、フレッシュだなぁと思って』




『おまえさー。
ここにいるのは一人じゃねーんだぞ。

わかってんのか?』


『はぁー。わかってねぇし。
俺が伝えたい気持ち』