「…すみません。」
「入寮テストのとき、何を出したんですか?」
「えっと…扇です。」
「扇、ね。あぁ、報告書にあったなぁ。もう一度思い浮かべてごらん。」
扇、扇…
「出したときの状況を思い出しながらやると上手く行きますよ。」
出したときの…入寮テスト…鵺…死…扇になって、風が…
あの時のことを思い出すと、テスト中の出来事よりも、どうしても彼女の顔が思い浮かぶ。
悠…
「野添くん、危ない!」
強い風が俺の周りを取り囲み、先生の声が耳に入った時には、俺の周りにいた人はみな飛ばされていた。
「野添くん、扇から手を離すんだ。」
「扇…?やった、俺の変形できてる!」
「わかったから手を離せ!うまく制御し切れていない、危険だ。」
扇から手を離すと、風が止んだ。
扇は元の玉に戻り、俺の足元に転がった。


