「できましたか?」


腕輪をどう使うか考えている俺たちに、河野先生が声を掛けた。


「できたんですけど…どう使うかわからなくて。」


「腕輪ですか。使い方は僕にも分かりませんが、こういう武器から離れた形を取る時は強い能力がある場合が多いんです。」


「そうなんですか?」


「ええ。だから扱いには注意してくださいね。扱いを間違えれば…例えばあんな様に…」


河野先生は先程短刀を出すことに成功した生徒を指さす。




「短刀ってなんかかっこ悪いよなー。」


「どうせならもっとかっこいい剣とかだそうぜ!」


短刀を出した男子生徒は他の男子生徒とはしゃぎながら、短刀をさらに違う形に変えようとしていた。


「よし、いくぞ!」


男子生徒が短刀を握ると、短刀は姿を変え、長い刀に変わった。


「すげー!」


「かっこいい!」


仲間からの歓声に、男子生徒は得意げになり刀を振った。


すると、刀は男子生徒の手からするりと抜け、ふらりと宙へ浮かぶと、男子生徒の身体を貫いた。







「きゃあああ!!」


近くにいた女子生徒から悲鳴が上がる。


「こんな風に、ちゃんと使いこなせないと妖怪の力に飲み込まれてしまうんですよ。」


河野先生は穏やかな表情のまま、そう言って刀が刺さったままの男子生徒の制服の襟を掴む。


「みなさん、よく見ておいてください。力とは大変怖いものです。一歩間違えれば、あなた方を守るどころか、命を奪うことになる。」


襟を掴まれた男子生徒はそのままずるずると教室の隅に引き摺られ、先生がぱっと手を放すと、床に落ちて横たわった。


先生はざわつく生徒たちのもとに戻ると、何事もなかったかのように授業を再開した。


「それではみなさん、変形の続きを行ってください。」