席について黒板の上にかかった時計を見ると、始業まであと5分。
教室は静かだった。
誰も何も喋らない。
1回目の授業だしこんなものなんだろうか。
5分後、8時半丁度、教室の引き戸が開く音がして、ショートカットの長身の女の人が教室に入ってきた。
女の人は教室に入るや否や、黒板に文字をずらりと書き並べ始めた。
そして何行か書き終えると、チョークを戻し、教卓に手をついてこちらへ向いた。
「おはようございます。1年C組の担任をすることになりました、高山です。」
赤縁のメガネを掛け、顔から推測するにかなり若い先生だろう。
「私の担当は今日の1限になっている現社です。まもなく1限が始まるのでみなさんは教科書を用意してください。」


