はまきり





「野添 桐です。」


「……。」


「……。」


名前は言ったはずだが、芦屋先輩はまだ俺の方を見ている。


そしてはっとしたような顔をすると、俺に「そんだけ?」と訊いた。


俺が頷くと、芦屋先輩は目を丸くして驚いていた。


「短いなー、それ自己紹介って言わないよ!!…じゃあ、次!」







次の自己紹介は神木。


その後は長い髪を三つ編みにした女子生徒、金髪の男子生徒、太ったメガネをかけた男子生徒、ガリガリの男子生徒、茶髪の派手めな女子生徒、クマみたいに大きな男子生徒、幽霊のように静かな女子生徒…


そして最後の1人は女子生徒で、なんというか、特徴がはっきりとした生徒だった。


真っ先に彼女の頭に目が行く。


「中原 亜希。」


真っ黒な髪を高い位置でポニーテールにした彼女はそう名乗る。


そして俺を睨みつけた。


「なに見てんのよ。」


「いや、…ごめんなさい。」


そりゃ見ちゃうだろ。


何せ彼女の頭、角が2本生えていたのだから。


何かのコスプレだろうか。