「…いいわ、それがあんたの答えなら。…スグ。」
髪の長い男子生徒が顔を上げて不満そうな声を漏らす。
「えー…僕がやるの?」
「当たり前でしょ。私汚れるの嫌いなの、よろしくね。」
「わかったよ…」
男子生徒が亜希に手を伸ばす。
その手は指と指のあいだに水掻きのようなものが付いており、爪は鋭く伸びていた。
そして彼は今にも動けない亜希の体にその爪を立てようとしていた。
「亜希!!」
動けない。
どうして、また目の前で誰かが死ぬ。
亜希は入寮テストで俺を助けてくれたのに、俺には助けることも出来ない。
「大丈夫。」
「え…?」
悠の方を見ると、悠は俺に微笑んだ。
「あの人たちは私に警戒してるけれど、野添さんにはまるで注意を払っていません。だから大丈夫…」
悠は小声でそう言った。
「野添の力なら…あのチームリーダーのゼッケン、吹き飛ばせるんじゃないですか?」


