はまきり





「野添ちゃん、今助けるよー!」


神木が学生証を刀に変え、俺の足首を掴む手を切ろうとする。


すると手の力は緩み、俺の足首から離れると湖の中に消えた。


「危なかった…」


「水の中になんかいるみたいね。」


水面が微かに揺れていた。


「1人ではなさそうですね。」


悠は拳銃の銃口を揺れる水面に向けたまま、辺りを見回す。


「気をつけてください、みなさん。恐らく仕掛けて来ます。」





悠がそう言い終わらないうちに、湖の水面から激しく水飛沫が上がり、長い触手のようなモノが俺たちに襲いかかって来た。


「な、何よコレ?!」


気が付くと、俺たちはみんな触手に絡み取られ、身動きが取れなくなっていた。


「落ち着いてください、亜希さん。恐らく相手は水に関係する妖怪。私たちでは不利です。機会を見て逃げましょう。」


なぜ悠はここまで冷静でいられるのであろうか。


逃げると言ったって、俺たちは完全に体を拘束されて動けない状態なのだ。


脱出は絶望的だ。