優しさ、そして愛




薫が指をさした先には
スタート地点に立つ蓮がいた





少し怠そうだけど
他の人とはなんていうか
オーラが違う





その姿に私の目は捕らわれた






ピストルの音と同時に
走り出す蓮






走る姿も綺麗で無駄がない






涼しい顔で校庭を駆け抜ける






一瞬の出来事だった






「杏…」





振り向くと蓮が歩いてきた






「お、お疲れ様!!」





急にかけられた声に驚きながら
蓮を迎えた






「すごかったね!!!

 あんなきれいに走る人はじめて見た!!」






さっきの興奮を伝えたかった






「ありがとな」





あ、蓮が照れてる





なんか可愛いな





顔が少し赤いのは
日に焼けたからではないみたい






「ほら、次は杏と翠でしょ!!

 この勢いで2人とも一位とってきなさい!!」






沙奈に背中を押された





「頑張ってね、杏ちゃん!!」





「翠もちゃんと走れよ?」







「頑張れよ、杏」







みんなの言葉に頷いた






「頑張れよ」







蓮の言葉が耳に響いた





「行ってきます!!」