緑の風と小さな光 第1部

一方、ヤールは王宮で王侯貴族に囲まれて育った。

王としての教育はもちろん受けただろうが、実務経験は浅い。まだ『知識』なのだろう。

おそらくは増税の件だって

「庶民のために○○を~造る。そのための経費だ。」

とか、そんな事だろう。多分、少数の偏った意見をもとに独り善がりで「庶民のためになる事」を決めている。

これは「魔法使いを酔わせる酒」よりもヤールにとって危険だ。

「悪い事は言わない。自国の民の暮らしを自分の目で良く見る事だ。大臣達の言う事を鵜呑みにするな。」

セレはそれ以上言うつもりは無かった。

「兄様の言う事ですから心に留めておきます。」

ヤールがセレの言葉を軽んじる事は無い。近い内に気付くだろう。

「それと、王宮仕えの者には口止めの魔法をかけておけ。王宮内部の事情が漏れているぞ。」

そのお陰で今回の事がわかったのだが…

「信用していたのですが…」

「気持ちは解るが甘いな。…いや、私もヤールの事は言えないな。ここで正体を明かしてしまったのだから。」

いつの間にか「私」になっている。

ヤールの方が髪の色が濃い。少し目が大きい。違うのはそれ位でセレとヤールは良く似ている。