見えた。

さすがに大きい。離宮の10倍は軽くありそうだ。

高い石塀に囲まれていたが、セレは軽々とその上に跳び乗った。

塀のすぐ内側には、見えない魔法の網が張り巡らされている。常人はここから先へは入れない。

だが、これもセレには問題無い。するりと通り抜け、庭に飛び降りた。

衛兵はいるが、彼等に見つからぬように走り抜けるのは難しくない。

中央の塔の最上階を目指して走る。そこに王の寝室がある。


しかし予想通り、セレが塔に近付いた時に国王の側近の魔法使いが気付いた。

「安々と入って来るとは、何者だ?」

タリヤ「忠実」という名の魔法使いだ。

ダークブラウンの長髪を後ろでキッチリと1つに結んでいる。

「どんな奴だ…?取っ捕まえて全て吐かせてやる!」

タリヤは呪文を唱えた。

セレに大地の魔法がかかった。

「うっ!」

足が地面に貼り付いた。転びそうになる。

すかさずカウンターの魔法。重力を弱める。何事も無かったかの様に、また走り出す。

「私の魔法を簡単に打ち消すとは…」

そんな魔法使いがこの辺りにいるなんて聞いたことが無い。

タリヤは警戒を強めた。