「王宮?…大丈夫なの?」

「ああ。明日の昼までには戻る。」

「…必ず帰って来てね。絶対ね。」

大きな瞳で心配そうにセレを見る。

「うん。絶対。」

老夫婦にもう一度、ピアリをお願いします、と頭を下げセレは出て行った。



セレ1人だったら夜の森も問題無い。真っ直ぐに走り抜ける。

風の魔法使いは俊足だから、王宮まで3時間程で行ける。

以前の身体だったら絶対に出来ない事だ。走るのは気持ち良かった。

「着くのは真夜中だな。」

当然、怪しい奴と思われるだろう。

門番や衛兵は何とでもなる。問題は国王直属の魔法使いだ。

『国王陛下の命が危ない、と伝えたい』

などと、いきなり言って信じてもらえる筈が無い。

かと言って、正々堂々と顔を見せて正体を明かす訳にもいかない。

とりあえず手持ちのストールで顔を隠した。

ますます『怪しい奴』だ。

「下手をするとヤールに殺されるかもな…」

そんな事を考えながら森を抜け、都の方に走る。そして王宮ヘ…

道は虚覚《うろおぼ》えだったが、王宮は特別な雰囲気の場所だ。おそらく魔法使いなら誰でも判る。