彼女は果物を買おうとしていたが、少しお金が足りなかった。それでも諦められずにいた所にローエンが来たのだ。

不足分はわずかだったので、ローエンは気にもせず小銭を出した。

それだけだったのだが、エルミアには感動的な事だったのだ。

「数日後、わざわざ礼に来てくれたのさ。家を探し当てるのは大変だっただろうに。」

彼女はそれからもローエンの家に来ては、献身的に身の回りの世話をしてくれた。

いつしかローエンも彼女を受け入れ、一緒に暮らす様になった。

そしてピアリが生まれた。

…そのまま、ずっと穏やかに暮らせると思っていたのだが…

「ある雨の日の事だ。彼女はびしょ濡れになって帰ってきた。ピアリと草原を散歩していた時に急な雷雨にあったんだ。」

ピアリが歩き始めた頃だった。

「雨に濡れた彼女の髪が、うねうねと動いていたんだ。」

ウンディーネの特徴の1つだ。

ローエンは思わずそれをじっと見つめてしまった。

…おそらくは驚きの表情で…

エルミアは自分の正体がばれた事を悟った。

「次の日、彼女の姿は無かった。…あの時、何故すぐに目をそらさなかったんだろう…」

ローエンは首を横に振った。