門は閉じていたが、鍵はかかっていなかった。

門扉を押し開け、庭園に入る。

真っ直ぐな石畳が蓮池の上を渡り、館の
正面玄関まで続いている。

池の中に小さな魚が見えた。

玄関にはレリーフの施された大きなドア。

よく見ると、取っ手に王家の紋章〈鳶〉があった。風の象徴だ。

引いてみる。ここも軋みながら開いた。

「大丈夫なの?」

何の躊躇も無く館に入るセレに、ピアリは声をかけた。

「心配無い。人の気配は2階だ。」

奥に向かって廊下が伸びている。

暗い。

無限の闇に吸い込まれる様だ。

歩を進めると、壁の燭台に灯がともった。

「えっ!?」

ピアリは驚いた。

誰かの魔法だろうか。

何か起こるのか、と思ったが別に何も
無かった。

相変わらずセレは無表情に歩いて行く。