言い方は無愛想だったが、ウォールの表情にセレは親身さを感じた。

「…優しい事を言ってくれるじゃないか。何だか父上と話しているみたいだ。」

「はぁ!?別にお前を心配してるんじゃない!ただ疑問に思っただけだ!」

ウォールは少し慌てた様子だった。それをごまかす様に言葉を続けた。

「お前は今はピンピンしてるじゃないか。7年前に何かあったのか?」

「そこは言えないね。」

「エルグ達よりもお前の方が商品価値がありそうだな。」

「エルグ達はどうする?」

セレの眼差しは『エルグ達には絶対に手を出させない』と言わんばかりだった。

「…今はやる気が失せた。また出直して来るさ。次に会う時にはお前も獲物だ。」

ウォールは立ち上がった。

「俺が捕まえるまで生きてろよ。」

「お前も無事でな。」

ウォールは何も言わずに歩き出した。そして橋の上に戻りかけた時…

ポン!

と音がした。

「うわ?!」

ウォールは紙吹雪をかぶっていた。

「あはは…」

セレが笑っている。

ウォールのウエストポーチにクラッカーを仕込んでおいたのだった。