「早く飛び降りるんだ!受け止めるから。」

セレはピアリに両腕を差し出した。

ピアリは高さに恐怖した。

「大丈夫だから!さあ!」

ピアリが躊躇している間に、セレに泥人形の群れが迫って来る。それでもセレは真っ直ぐに両腕をこちらに向かって伸ばしている。

「えいっ!」

思い切って飛び降りた。

セレがしっかりと包み込むように抱きとめた。

セレはローエンにも手を伸ばした。その手を頼りにローエンも飛び降りた。


その間にも泥人形はどんどん数が増えてゆく。

剣で切ればすぐに崩れるが、次から次へと地面から湧き出て来る。

「魔法を使って下さい。」

ローエンがセレに言った。

「俺が?」

魔法を使っていたという事実は覚えている。

…だが、感覚が思い出せなくなっていた。

「このままでは、こちらが疲れて動けなくなるだけです。あなたは元々優れた魔法使いだ。大丈夫。呪文は私が教えます。」

「…わかった。」

やってみるしかない、とセレは思った。