それまで穏やかだったローエンの表情が厳しいものになった。

「セレ様には430年の寿命があるという事です。」

「430年?…本当に…?」

…人を担《かつ》ごうとしているのか…

一瞬、セレはそう思ったが、ローエンの真剣な眼はそんな風には見えなかった。

セレの表情も固くなった。

ローエンは気付いたが、素知らぬ振りで続けた。


「あなたは普通の人間よりも、ずっとゆっくりと歳を取る。

傷や病気に関しても通常の魔法使いより遥かに強い回復力と抵抗力を持っています。

精神も強靭になっている筈だ。…全てはフィズを守る為です。」


「フィズ?」


「はい。私達は魔法石の事をそう呼んでいます。力が発動する時の感じが、炭酸酒が弾けるのに似ているんです。」


ここでピアリが口を挟んだ。

「あの…何か食べる?もう随分時間が経っているわ。お腹が空いたでしょ?」

重い雰囲気を和らげたかった。