それとなく工場の人達に少年の事をきいてみた。

名前はジン。

家族はいない。近くの小屋に一人で住んでいる。

工場ができた当初から働いている。

みんなが知っているのはそこまでだった。

ジン、とは「竜」だ。

もしかして、そのままの意味なのか…?


とりあえず、セレ達は仕事を終えて、ラドニーが貸してくれた小屋に帰った。

「お帰りなさい。」

ピアリとルルグが夕食を用意してくれていた。

「トマトソースで鶏肉と野菜を煮込んだの。ルルグが野菜を切ってくれたのよ。」

夏向きのさっぱりメニューだ。

「美味そうだー!」

エルグは飛び付こうとした。

「手が真っ黒よ!洗って!」

ピアリに怒られた。

「あっ…」

急いで手を洗い、タオルを出そうとポケットを探った。

「あ、金、忘れた。」

今日の分の賃金を工場に忘れて来た事に気付いた。

「ちょっと工場に行って来る。」

今ならまだ閉められていないだろうし、すぐ近くだ。5分もあれば戻って来られる。それから落ち着いて食べよう。

そう思って小屋を出た。

すると、小麦の倉庫の方から走り去る人影が見えた。

「あれは…」

ジンだ。