カラスが帰り着いたのは…

「城だ…」

小さな城だ。王城ではない。貴族の居城だろう。

再び近くの木に登り、城壁の中を覗き見る。

カラスはある部屋に入り、しばらくしてまた何処かへ飛んで行った。

「…あそこか。誰かいるな。」

窓際に出て来た人物には見覚えがあった。

「あの時の医者だ!」

ノーラの鞭打ちの場にいた医者だ。

近付いてみる。

魔法使いの気配は無かった。

木から城壁、そして屋根へと跳び移り、部屋の様子を伺った。

話し声が聞こえた。

「ノーラ様は明日、おいでになるのですね。」

「うん。今度こそ上手く行く。魔法使い用の牢に入れるから用意しておけ。」

「はい。」

城内に牢獄があるという事は、領民を裁く権利があるのだろう。

幾つかの村を束ねる立場の者と思われる。

ノーラの家よりも格が上らしい。

「まさかノーラが歩ける様になるとはね。」

「はい。魔法というのはすごいものですね。」

「だから今回、魔法を封じるのだ。」

「今度こそレビン様のものになられるでしょう。」

レビン…獅子。医者の名前だ。

誇り高き、ではなく、よろしくないプライドを持った獅子だ。