「大丈夫かな…」

ピアリは怖がっていた。

だから昨日は水を飲まない様にしていたのだが、流石に耐えられなくなった。

「ずっと飲まない訳にはいかないだろう。もし何かあっても、その時のために俺がいる。」

「うん…」

警戒しながらピアリはグラスを受け取った。

一口飲んでみたが大丈夫だった。

「冷たくて美味しい。」

様子を見ながらもう一口、と思った時…

ずいっ!と例の腕が出て来た。

「きゃ!」

セレはその腕をつかんで力ずくで引っ張った。

現れたのは…

「女性か!」

若い女性だった。

刺繍やレースで飾られた絹のドレスを着ている。身分の高い者だろう。青い瞳の美女だ。

床にぺたりと座り込んで動かない。まさか引っ張り出されるとは思わなかったのだろう。

「驚いたな…」

出て来た本人と同じ位セレとピアリも驚いていた。女性だったとは…

簡単にスルリと引っ張り出されるとは、セレの動きの速さが予想外だったとしても、魔法の力は弱いのだろう。

「どうしてこんな事をする?」

セレは静かに問いた。

「……」

女性は答えなかった。

患者を診ていた医者も異変に気付いてやって来た。