…が、

いつの間にかセレの方がエルグを羽交い締めにしていた。

力では敵わないかもしれないが、動きの速さではセレの方がずっと上だ。

セレは大地の魔法でエルグの動きを封じてから手を放した。

「こんな薬では全然効かないよ。お前は魔法使いの事はあまり知らない様だな。」

「この薬なら大丈夫だって言われたんだ…」

「相当弱い魔法使いになら効くかもな。残念ながら俺はそうじゃないみたいだ。それに縄で縛るのも無意味だ。」

「この縄にも魔法を封じる薬が染み込ませてあるって…」

セレは縄に触ってみた。

「これも弱いな。」

…灰色のツバメを操っている奴か?あのツバメから少し魔法を感じたな…

「何か理由があるんだろう?話してくれないか?」

「……」

「あのツバメなら近くにはいない。少なくとも俺の感知できる範囲には。」


エルグは泣き出した。

「弟の病気を治してくれるって約束なんだ。だから…」

「俺を捕まえて来い、と言われたんだな?」

エルグは頷いた。

「あいつにしか作れない薬なんだ。それを飲まないと弟はすごく苦しそうなんだ。」

弟が心配で仕方ない気持ちはセレにも良くわかる。