手早く湯を沸かし、ガーゼを入れる。

自分の手も何度も洗って、消毒済みのガーゼに薬液を染み込ませ、セレの傷口を拭いた。

「うっ…」

セレは痛みに呻いた。

殺菌と止血の効果がある軟膏をたっぷりと塗って、その上に包帯を巻いた。

「これでいいわ。」

老夫婦もセレも、ピアリの手際の良さに呆気に取られていた。

「普通の人だったら縫合が必要な傷もあるけど、あなたは魔法使いだからこれで大丈夫だと思うわ。」

「ピアリ、君は医術の心得があるのか?」

「お父さんが魔法医だから時々手伝っていただけよ。」

「そうだったのか。」

まだ腕は動かなかったが、楽になった。

「ありがとう。痛まなくなったよ。」

「それは良かったわ。で?何の傷なの?」

「…森の中で転んだ…」

随分と無理のある説明だ…

老夫婦の前では話したくないのかもしれない、と思ったのでピアリは後で訊く事にした。