雨風ささやく丘で

10月23日、午前7時23分。



朝窓の隙間から微かな光が部屋を照らし、目を覚ました私は思いっきりベッドの上で体をのばした。
昨夜のことなど気にも触れずに眠れたのはお酒のおかげでもあった。そのため快眠だった。

先にテレビを点ける、その次に身支度からの化粧をするのが、いつの間にか出来ていた順番のルール。
朝食もいつもと変わらない菓子パンにいちごオ・レ。

「○○県の○○市の女子高校生が行方不明になった事件から丁度2年目になる今日、未だに被害者と犯人は発見されておらず、警察は調査に難航しています。警察は誘拐事件とみなし、現在も犯人の行方を探しています」
女性キャスターがそう言うと、次に事件のまとめ動画が流れ始めた。

「○○県○○市。今日から2年前、影谷菜々子さん当時17歳の高校生が下校してから何時間も経ち、深夜になってなおも家に帰ってこない、という110番通報を警察が受け、近辺で捜査を行った。捜索当時の夜雨が激しく降っていたことからも、捜索が困難になり、警察は何も手がかりを得ることはできなかった。

菜々子さんの知り合いや友人、高校関係の人物に聞き込み調査を行うが特に目立ったことや、因縁関係はなかった菜々子さん」

すると今度は顔にモザイクのかかった女子高生が現れた。
「影谷さんはどういう性格をしておられましたか?」
「目立つのが苦手な人だったのはなんとなく覚えてますけど」
カメラとマイクを向けられた女子高生は照れくさそうに前髪を撫でながら答えた。

次に現れたのは当時担任だったという中年男性の教員。
「奈々子さんが校内で問題など引き起こしたことはありますか?」
「いいえ、いちどもありません。普通の高校生でしたね」
「家庭問題などの話を持ち込まれたことは?」
「内気な子だったので、家庭内のことは聞いても喋りませんでしたが」

「などと、菜々子さんは問題を引き起こす様な生徒ではなかったことが浮き彫りになった。警察はこれを基に、この事件を無差別誘拐事件と判断した。

手がかりは、奈々子さんを最後に目撃していたという生徒の証言である。その目撃者は自宅方向の山道へいつも通り菜々子さんは向かっていたという。しかし、山道や菜々子さんの帰宅ルーツの近辺を検索したものの、怪しげな遺留品さえ発見できなかった。一般市民からの情報提供は多数あったなか、解決には至らず、今もなお未解決のままです」

今度は黒い服を着た被害者の母親が画面に。
「私の娘はとてもいうことのきくいいこです…今でも帰ってくると心の中で信じています…」

母親は悲しみの言葉を津べる度にひくひくと涙を拭いていた。母親が話している間、被害者の写真がアップされる。
一見どこにでもいるような普通な高校生にしか見えない。長い黒髪に、顔立ちの整った女の子。





何故こういう人が、悲惨な事件に巻き込まれなかればならないのだろうと私は思った。その次は自分かもしれということも。

無関係な私がそれ以上見てもどうにもならないと感じた。私はテレビを消し、アパートを出た。