「困る・・・?なにがだ?」
御影さまは、心のそこから驚いた、というような顔でわたしを見下ろす。
「なにがって、いきなりここに住むなんて
わたし、困ります!」
「ここに住むことが困る?
だから、おまえはなにもしなくていい。
ただ、住居がここになるというだけだ。
学校へは確かに少し遠いが、案ずるな。
毎日登下校共に車を使用すればいい。」
・・・そういうことじゃない!!
この御曹司、やっぱり御曹司だ。
価値観がまるでちがう。
わたしが、普通と思っていることと
彼が普通と思っていることが違う。
「そういう問題じゃないんです!」
「じゃあ、どういう問題なんだ?」
「だから、
いきなりなにも言わず、なんの前触れもなく
車でつれてこられて
『ここが今日からあなたの家です』
なんて言われて、
『はい、そうですか』
って納得できるわけないじゃないですか!」
一気にたくさんのことを、噛まずに言った。
ちょっと、噛まなかったことに満足感を覚えながら
ぜえ、ぜえと息を整える。

