_____
来栖川御影、5歳。
8月16日。
僕は今日も習い事に追われていた。
しかも、今日からは新しい習い事の茶道もはじまった。
初回のレッスンを終えて、帰路。
車から見える景色はいつもとは違う。
だってはじめて来た道だもの。
車の中には本がたくさんあるけれど、もうすべて読み切ってしまって退屈だ。
でも、別に新しいものがほしいとも思わない。
僕は車から外を眺めるのが好きだから。
お父さんが言っていた。
『あの人たちはおまえとは住む世界が違う人なんだ』
どういう意味か、はっきりとはわからないけど、たぶん関わることはない人たちなんだろう。
そんな人たちを、少しでも知れるような気がするから、眺めるのは好きだ。
今日も、じっと静かに車の外を見ていた。

