「姫さんならたぶん、寝室でいじけてるんじゃないかな。慰めてあげなよ」



蕾は契約解除の方法をぼくに教えると、まるで興味がないように言った。


「ちょっとまってよ。つまりぼくは約束を果たすまで帰れないってことなんでしょ?」



面倒くさそうに頷く。



「それまでどこにいればいいの?そもそも家族が心配する」



なにも言わずに帰らないなんてことは出来ない。


心配されて警察に連絡でもされたらどうするんだ。



なにか連絡がとれたらいいんだけど、どうもここの国は電話なんかがある雰囲気じゃない。



「ここに泊まりなよ。連絡ならしとく」



泊まるって…同居するってこと!?



あ、居候かな。



いやでも色々まずいよ。



今日会ったばっかの人の城に何日も泊めて貰うなんて。



あと蕾ぼくの家の電話番号なんて知らないよね。



色々言いたそうにしているぼくに、蕾はまた面倒くさそうに答えた。



「どうせなら働いてくんない?働き手がいなくて大変なんだよ」



「わかった…。そういうことなら」



住みこみで働くってことか。



大丈夫かな…。



「あ、それじゃあ他の人に挨拶とかしたほうがいいよね」



仕事仲間にさせてもらうんだし。



礼儀として、しといたほうがあとあといいはず。



「他の人?ああ、メイドが一人いるよ」



「一人?」



こんなに大きな城に、召使とメイドだけ?



「これで住人が4人になる」



執事もコックもいないなんて…。