「仕事に、身が入ってなかったな」

業務終了後、久しぶりに圭介の車に乗ったわたしは、開口一番そう言われた。

「まさか、まだ上司モード?それは反省してるから、ここで言わないでよ」

小さくなったわたしを見て、圭介は吹き出した。

「そうじゃないよ。ホント、いつの間にかオレの評価は下がってたんだな。純粋に心配してるんだよ。心ここにあらずな感じだったから」

「心配、してくれてたの?」

「ああ。そうだよ。だから、早く話がしたかった」

そうなんだ…。

昼間目が合ったのは、もしかして栞里さんを見てたのかもって思ったりもしたけど、違ったんだ。

わたしを見てくれてたんだ。

それは、やっぱり嬉しくて、心の中が温かくなる。

「今夜、きちんと話すから、陽菜も自分の気持ちをちゃんと話して欲しい」

「うん、約束する」

ほんの一瞬だけ、お互い笑みを交わした。

そして車は、圭介のマンションへ着いたのだった。