「松山課長、チェックお願いします」 「ああ、ありがとう花井」 ニコリと書類の束を受け取る圭介に、わたしも小さな笑みを返しデスクへ戻る。 ここは、大手出版社のタウン情報誌部門。 わたしはそこで、編集の仕事をしているのだ。 タウン情報誌というだけあって、近郊のレストランやホテル、それに旅館などを取材に回り、その情報を雑誌にしている。 編集という仕事は3年の経験はあるけれど、この会社での仕事はまだ1年くらいだった。