彼は、覚えていた。 あたしも一緒にホテルに泊まったことを、ちゃんと覚えていた。 覚えてないって、言ったくせに。 ポケットに手を突っ込むと、渡されたリップクリームがある。 これをあたしのだと言った野村は、間違いなく、あたしがあのホテルの部屋にいたことを覚えている。 ……つまりは、シた、ってこと? 冗談? キュッと唇を噛み締める。