【完】切ないよ、仇野君

トントン、とまるでお父さんのような優しい手つきで私の背中を叩いた椿は、歩くのを促した。


「泰ちゃん、後でちょっと話すことあるかも。マイブラザーとしての大事な話な」


「……分かった。ちー、あんま無理せんごつな。部活も辛かったら休んで良かけん」


椿と一緒に歩き出した私に、甘い声でゆったりと言った泰ちゃんはやっぱり優しくて。


けど、その優しさが今は苦しい。


この間の練習試合の時から、少し気まずくてよそよそしい私に対して、どうして優しく出来るの?


分かってる。泰ちゃんが優しい人なのは。それが『誰にでも』だってことも。


やっぱり私は、少女漫画の主人公みたいにはなれない。


誰かにとっての『特別な人』にはなれないんだって、優しさに触れるとその事実を突き付けられてるようで辛いよ。


だから教えてよ。どうしたら泰ちゃんのこと、好きじゃ無くなれる?友達としていられる?


望みなんか無いこの想いは、どうやったら消せるの?