「シノってさぁ、彩月に好かれとーよな」


四月の頭、二年生に上がって初めての朝を迎えた私は、先生に頼まれたゴミ捨てを済ませ教室に帰るところだった。


その帰り道、体育館とグラウンドの間の水道に差し掛かろうとした時に会話が聞こえ、私は思わず立ち止まる。


「彩月って、彩月千歳んこつ?」


「そー、シノんクラスんデケェ女たい」


『デケェ女』という言葉に、もう胸は痛むことはない。言われ慣れてるし。


でも、その次の篠田君の言葉には、胸が痛むどころか避けることのできない大ダメージを受けてしまった。


「…………いやいやー、ちーちゃんはなか。良い子やし美人ばってん、俺よりデケェしな!」


至極爽やかな笑顔で言ってのけた篠田君の言葉に、私は崖から突き落とされた気分になる。


嗚呼……終わった。始まってもいなかったのに、私の恋は終わってしまったんだ、と悟り、どんどんどん底まで引き込まれて行く。